小出裕章ジャーナル

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年間20ミリシーベルト以下は健康に問題ない? 「なぜそういう数字が決まったかというと、それは安全だからではないのです」~第48回小出裕章ジャーナル



ラジオ放送日 2013年12月6日〜13日
Web公開 12月7日
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聞き手:
避難している方たちの帰還条件となった20ミリシーベルト問題です。原子力規制委員会が11月11日の有識者会議で帰還する住民に対し、年間の被ばく放射線線量が20ミリシーベルト以下であれば、健康上に大きな問題はない、という指針をまとめたと報道がありました。改めて、20ミリシーベルトというのはどういう数字でしょうか?

小出さん
皆さんご存知だと思いますが、この日本という国では普通の人々は1年間に1ミリシーベルト以上の被ばくをしてはいけないしさせてもいけないという法律がありました。それに対して、私のような放射線を取り扱いながら仕事をしている、給料をもらっている、そういう人間に関しては、1年間に20ミリシーベルトまではいいだろうという法律があったのです。

なぜ1ミリシーベルトとか20ミリシーベルトとかいう、そういう数字が決まったかというと、それは安全だからではないのです。

被ばくというのはどんなに微量でも危険があるということが現在の学問の到達点でして、20ミリシーベルトはもちろん危険があるけれども、給料をもらっているのだから我慢をしなさい、と言って決められたわけですし、1ミリシーベルトにしても危険がないわけではない。安全であるわけでもないのですけれども、この日本で住むからにはその程度は我慢をしなさい、と言うことで決められていたのです。

ですから、科学的な安全量でもなんでもなくて、いわば、社会的に決められた値だったのです。

そして、残念ながら、福島第一原子力発電所の事故が起きてしまい、東北地方と関東地方の広大な地域が放射能で汚されてしまいました。そうなると、今までのような法律はもう守ることができない、今は平常時ではなくて緊急時なのだから、住民に被ばくを我慢させるしかないと国が踏んだわけです。

そして、世界には国際放射線防護委員会(ICRP)とか、国際原子力機関(IAEA)というような組織があってですね、事故が起きたりした時の緊急時には、1ミリシーベルトから20ミリシーベルトぐらいの被ばくは我慢させなさいという勧告を出しているのです。それを使って、日本でも20ミリシーベルトぐらいまでは我慢させてしまおうということを決めたわけです。

聞き手:
根拠となる国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告ですね。緊急時にはしょうがない、緊急時って何年続くんですか?

小出さん
分かりません。本当でしたら、ICRPやIAEAが想定していた緊急時っていうのは、ごく短期を想定していたと私は思いますけれども、福島の事故で被ばくをしていく人たちには、たぶん何十年という単位で被ばくをしてしまいますので、緊急時と今まで考えられていたものとまったく別の状態になっていると私は思います。

聞き手:
緊急時における定義・期間というのはこの勧告の中には何も書かれていないということですか?

小出さん
そうです。

小出裕章ジャーナル

聞き手:
ただ一方で、オリンピック招致の時に安倍総理が「コントロールされている」という話をしたことにもあるように、日本政府としては基本的には緊急時じゃないんだということを対外的には一生懸命におっしゃっているわけですよね。

小出さん
要するに嘘をついているわけですね。

聞き手:
ICRP自身が、緊急時じゃないんだ、という勧告をすることはないのですか?

小出さん
たぶんないと思います。IAEAはもちろんですしICRPも、私は原子力を推進するための団体だと思っていますし、彼らが予期しないような形でもうすでに福島の事故は起きてしまったのですから、そうなると原子力を推進するためには何がしか我慢させるしかないとIAEAもICRPも思っているはずであって、結局彼らは、20ミリシーベルトを福島の人たちに押し付けるという役割を果たすだろうと私は思います。

聞き手:
あともうひとつですね、11月11日の会合では、帰還後の被ばく線量の測り方を個人に線量計を配布して、測ってもらうという方法に切り替えるということになったということですけれども、内閣府がいうには現行制度より放射線量が3分の1から7分の1に下がる例もあって、除染費用が大幅に少なくなる可能性もある、というようなことを言っているということなんですが、個人として測るとそんなに変わるものなのですか?

小出さん
たぶん、そんなに変わることはないと思いますし、問題は個人の線量を測るということはもちろん必要だと私も思います。ただし、それだけで済むのではなくて、いわゆる現場の汚染がどれだけだということをきっちりと知らなくてはいけないと思います。

たとえば、私自身は京都大学原子炉実験所で放射線を取り扱う仕事についています。そのため、個人線量計を常に持っています。ただし、それだけではなくて、京都大学原子炉実験所の放射線管理区域ではこの場所がどれだけの被ばくをしてしまう、こっちの場所はどれだけだ、というようにそれぞれエリアごとで被ばく線量測定するということをやっているわけです。

それがわかるから放射線量の高いところにはなるべく近づかないようにしようとかですね、そういうところでどうしても作業するときには時間を短くしようとかいうことを考えることができるわけです。

ですから福島の場合も、それぞれの場所がどれだけの被ばく線量になっているかということをまずはきっちりと調べてそれを住民たちに知らせるということをやるべきだと思います。

たとえば私が考えているのは、電信柱ごとにですね、この場所は1時間あたり何マイクロシーベルトになっていることを常に表示する。それで住民たちがどの場所が危ないかということを知ってですね、自分で選択できるようにするということをやるべきだと思っています。

聞き手:
そうすると、エリアごとのものも出しつつ、個人線量計も皆さん持っていると、これが望ましいとこうことですね。

小出さん
そうです。二重にやる必要があると思います。



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