小出裕章ジャーナル

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福島原発は今/汚染水対策と除染について「現在、放射能で汚れた場所に人々が捨てられてしまっているわけで、その人達の被ばく量を減らすということはなんとしてもやらなければいけないと思います」〜第101回小出裕章ジャーナル



ラジオ放送日 2014年12月12日〜19日
Web公開 12月13日
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景山佳代子:
福島の原発事故からもう3年半以上が経過して、とてもアンダーコントロールとは言えない状況なんですが、12月と来年1月の小出裕章ジャーナルでは、特集シリーズをお送りしていこうと思っています。12月は「福島原発の今」、1月は「原発はなぜいけない?」というふうになっています。本日の特集シリーズは「福島原発の今」で、汚染水対策と除染対策について特にお伺いしていきたいなと思ってるんでよろしくお願いします。

まず汚染水対策なんですけれども、こちら小出さんずーっと汚染水については「難しい」ということをおっしゃっていましたので、改めてっていうふうにはなるんですが、まずALPS(アルプス)の稼働なんですが、このアルプス10月から本格稼働したということなんですけれど、このALPSっていう物のその除染の現状と課題というのをちょっと伺っておきたいなと思ったんですがいかがでしょうか?

小出さん
はい、汚染水と皆さんが呼んでいるもの、それは放射能で汚れているという意味ですよね。

景山:
はい。

小出さん
これまで東京電力も国も放射能で汚れた水の中からセシウムというただ一種類の放射能だけ取り除いてきたのですけれども、セシウム以外にもたくさんの放射性物質がありますし、特に重要なのはストロンチウムという放射性物質ですが、それはこれまでは全く取り除けなかったのです。それを何とかして取り除きたいということで、アルプスという装置を設置しようとしたわけですが、残念ながらほとんどまともに動いていません。

一番問題なのは現場。福島第一原子力発電所の敷地の中が、もう放射能の沼のような状態になってしまっていまして、どんな装置を作るのも、どうやってその装置を動かすかもすべてが被ばくを伴ってしまうということで、安全な場所でゆっくりとキッチリとした装置を組み立てて、それをゆっくりと被ばくもしないまま運転できるというような状況ではないので、次々と新しいトラブルが出てきてしまって、それを乗り越えるためにもまた被ばくをしてしまうという、そういう環境なのです。

私はもちろんアルプスが期待通りに動いてほしいと願いますけれども、そうなることもとても難しいという、そういう状況なのです。ただし、ALPSが動いたとしても、取り除けない放射能というのはありまして、例えばトリチウムという名前の放射性物質はALPSは動こうと、他の浄化装置が動こうと、全く取り除けません。ですから、結局そのトリチウムに関しては、何の対策もとりようがありませんので、いつの時点かであれ「海に流す」と必ず彼らは言い出します。

景山:
じゃあ、その結局は取り除けなかった放射能物質っていうのが、含まれたままの水が海水に出るっていうことになりますね?

小出さん
そうです。はい。

景山:
あと、もうひとつ汚染水についてなんですけれども、東電が海側のトレンチ、配管等が通る地下トンネルにたくさん溜まっている高濃度汚染水を除去しようという、こういう計画を立てていたんですが、結局これ建屋からの汚染水流入が止められなくって、東電は汚染水の完全除去っていうのは断念しましたっていう報道がありました。東電はセメントを流し込んで固めようという案を出してるんですけれども、こういった案の実行性というか問題点とかあれば、また教えて頂けますか?

小出さん
はい。ここ1年近く東京電力と国が何をやろうとしてきたかと言うと、トレンチと呼んでいる地下のトンネルがあるのです。そのトンネルの中を配管が走っていたり、電気の配線が走っていたりするわけですけれども、そのトンネルの中に、2011年3月の段階ですでに1万トンもの放射能汚染水が溜まっていたのです。

私はもうその段階で、この汚染水をなんとかしないと、どんどん海へ流れていってしまうので、その段階でその汚染水だけはとにかく巨大タンカーにでも移して、1万トン分の処理をすべきだと発言をしたのですが結局、それを東京電力も国もやらないままきてしまったのです。これもまた1年程前になってとにかくやらなければいけないということで、トレンチの部分を遮断しようという作業を始めたのです。

どうやって遮断するかと言うと、トレンチの一部を凍らせて、原子炉建屋タービン建屋の側と地下のトンネルを隔離しようとしたのですけれども、いくらやってもそこに氷の壁を作ることができないということで、彼らの計画が失敗してしまったということになりました。

これからは、今景山さんおっしゃって下さったように、コンクリを流し込んで、順番に汚染水を少しずつ少しずつ抜き取っていくというやり方に変えると言ってるのですが、多分それしか私もないと思います。ただし、汲み出した汚染水というのは、強烈に放射能で汚れていますので、それをじゃあこれから一体どうするかということもこれから考えなければいけません。

小出裕章ジャーナル

景山:
なるほど。では、次に今度は除染対策のことについて伺っていきたいんですけれども。除染についても、もうほんとにずーっと小出さんは難しいということをちゃんと発信してくださってたんですが、相変わらず、復興予算というところが除染に対しての巨額の予算が注ぎ込まれていて、これ実際どれぐらい効果があるんだろうかっていうふうに思うんですが、除染を効果的に実施する方法っていうのはあるんでしょうか?

小出さん
まず除染という言葉ですが、いわゆる漢字で書く除染はですね、汚れを除くと書くのですね。しかし、汚れの正体は放射性物質、放射能なんです。放射能、放射性物質というのは、人間がどんなふうに手を加えても、消すことができないものですので、言葉の本来の意味で言えば、除染というものはできないのです。

景山:
そうですね。はい。

小出さん
じゃあ、何ができるかと言うと、人々が生活している場の汚染をどこか別の場所に移すということであって、私はその汚れを移すという意味で「移染」という言葉を使っています。できることは唯一それなのです。

景山:
ですよね。はい。

小出さん
しかし、今現在、放射能で汚れた場所に人々が捨てられてしまっているわけで、その人達の被ばく量を減らすということはなんとしてもやらなければいけないと思います。私は本来ならば、放射能で汚れた場所から人々を避難させる、移住させるということが一番いいと思いますし、国家の責任としてやるべきだと思っているのですが、国家がそれをやらないで、人々を汚染地帯に捨てている限りは、人々の生活範囲から汚れを移動させるということだけはやらなければいけないと。

今、福島を中心にして、1万4千平方キロメートルという広大な地域が放射線管理区域という区域に指定しなければいけないほどの汚染を受けているのです。放射線管理区域というのは普通の人々は立ち入ることすら許されない。私のような特殊な人間でも、そこに立ち入ったら水を飲むことも許されない。つまり、生活してはいけないという、そういう場所になってしまっている。家も汚れている、庭も汚れている、道路も学校も公園も田畑も林も森も山も汚れているのです。もちろん、そんな所を全部移染するなんていうことはできる道理がないのですけれども。

でも、人々が毎日生活している家であるとか学校であるとか、そういう所だけは何としてもその移染しなければいけないと私は思います。あまり、効果があるとは言えませんけれども、でもやらざるを得ないと思います。

景山:
その私達が考える以上に、本当に難しい問題をずっと次々に突き付けられているというのが現状かなというのを改めて確認させてもらいました。小出さん、今日もどうもありがとうございました。

小出さん
いえ、こちらこそありがとうございました。



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